本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

人気漫画誌の編集者が学生の作品を添削する「出張編集部」を開催 人気漫画誌の編集者が学生の作品を添削する「出張編集部」を開催

キャラクター造形学科
2024/02/29

2024年1月26日(金)、あべのハルカスのスカイキャンパスで「出張編集部」が開催されました。実際にプロの漫画家と二人三脚で作品づくりに取り組んでいる漫画雑誌の編集者を招き、学生たちの作品を添削してもらうという人気企画。学生たちにとってプロからの率直な評価を聞くことができ、ブラッシュアップに向けたアドバイスがもらえる貴重な体験です。今回は「少年サンデー」や「スピリッツ」など、小学館の人気漫画誌6誌の編集部の方々が来場するまたとないチャンス。大阪芸術大学・大阪芸術大学短期大学部・大阪美術専門学校と3校の60名あまりの学生が参加する一大イベントとなりました。

小学館の花形漫画誌6誌が顔をそろえる一大イベント

今回は「少年サンデー」「ゲッサン」「スピリッツ」「コロコロコミック」「スペリオール」「ちゃお」と小学館の花形漫画雑誌6誌が一堂に会する大規模な「出張編集部」。プロの漫画家をめざす学生にとって、漫画界の第一線で活躍する編集者がズラリと顔をそろえる会場は憧れの世界。完成原稿を携え、次々と会場に訪れる学生は一様に緊張した面持ちで、自分の作風や希望に合わせ事前に登録した最大2誌から添削を受けました。

一様に緊張した面持ちで作品を持参する学生たち

第一線で活躍する編集者から実践的なアドバイスが

開始と同時、編集者の方々が一斉に作品に目を走らせはじめ、学生たちは神妙な面持ちでそれを見守ります。張り詰めた空気に包まれていた会場は、質問のやり取りや作品の感想などの声で次第に活気を帯び、各テーブルで熱のこもった指導が行われていきます。編集者のアドバイスに真剣に耳を傾ける学生、寸暇を惜しんでメモをとる学生、作品づくりの難点を相談する学生など、一人ひとりがマンツーマンで受けるプロからのアドバイスに一心を傾注していました。

カット割りやキャラクター設定など、アドバイスは具体的で適確
良いところを褒めてもらえると、思わず笑顔がこぼれるシーンも
学生の作品に真剣に向き合ってくれる編集者の方々の姿も印象的
学生の作品に真剣に向き合ってくれる編集者の方々の姿も印象的

参加した学生に話を聞いてみると

「無駄なカットを省いて、誌面にメリハリをもたせた方がいい」

「作品のテーマをトップに見せると、もっとよくなる」

「2誌から添削を受けたことで、視野が広がった」

 など、画力やストーリーにとどまらず、細かいカット割りやキャラクター設定など、誌面掲載を想定した具体的かつ適確な助言をもらった、いいところを褒めてもらえたと興奮気味に話してくれました。

学生からはモチベーションが上がったとの声が聞かれました

プロデビューの第一歩を踏み出す大きなチャンス!

午後からは、プロの漫画家として活躍する大阪芸大の卒業生も来場。「出張編集部」がきっかけで新人賞受賞をつかんだ“清家孝春”さん、東京でアシスタントをしながら連載を獲得した“ちゃんやつ”さん、Web漫画家として大活躍する“ちーにょ”さん。作風もプロデビューの経緯もそれぞれ違うとあって、作品づくりに関するノウハウから卒業後の進路まで、学生から寄せられるさまざまな相談も三者三様のアドバイスで対応してくれました。

「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて連載をもつ清家孝春さん(右)
本格的なダークファンタジーなど、レベルの高い学生作品が続々!

ミステリーにファンタジー、恋愛ものやヒューマンドラマなど、多種多様な学生の作品を見終えた編集部の方からは、「大阪芸大さんは全体的にレベルが高く、楽しく拝見させてもらいました。これからもプロをめざして、描き続けてください」と嬉しい総評が。過去には、「出張編集部」で出会った編集者さんと一緒に、著名漫画雑誌の新人賞をかちとるなど、受賞・連載の実績も数多くあり、プロデビューの夢を現実に変える大きな一歩となる有意義なイベントとなりました。

キャラクター造形学科 3年生
岩坂 未侑 さん

私が持参したのは2作品で、1本はKADOKAWAが発行する「ハルタ」の第4回八咫烏杯で受賞、本誌デビューを果たした『壁紙の風景』。もう1本は、ビッグコミックの担当編集さんと一緒にすすめている作品です。「スピリッツ」の編集者さんは、想像以上にじっくり読んでいただき、絵も丁寧に描けているとほめてもらえたので、素直にうれしかったですね。私はストーリーを大切にした作品をめざしているのですが、それゆえに無駄な説明カットが多いことを指摘されました。カット数を絞り込んで、誌面にメリハリをつければ、もっと良くなると適確なアドバイスをいただきました。

「ゲッサン」の編集者さんからは、ドキッとするくらい厳しい指摘を受け、プロの漫画家として活動していく覚悟を問われました。自分がまだ甘い気持ちで取り組んでいることに気付かされて、正直、驚いています。この春、私は4年生になりますが、ずっと漫画を描いていたいと考えていただけで、自分の進路は曖昧なままでした。今回、将来について真剣に考えるきっかけを与えてくれた編集者さんには、心から感謝しています。自分にとって、出張編集部とはクリエイター側ではなく、編集者側の意見がもらえる貴重な機会です。だから、たとえ完成原稿が手元になくても、授業で作った作品をあるだけ持って行き、チャレンジすることをおすすめします。精一杯の自分を評価してもらってください。

大阪芸術大学短期大学部 デザイン美術学科2年生
松井 笑 さん

1作目は恋愛ものでしたが、今回は2作目の『リメンバー・ホラー』というホラーギャグ作品を持参しました。まず「スピリッツ」の編集者さんからは、テンポがよくて読みやすいし、絵もうまいと高評価をいただきました。主人公の女の子キャラにもう少し特徴を出した方がいい。“恐怖”って何?というテーマについて、自分なりの正解を先に考えておいた方がいいというアドバイスも参考になりました。

「少年サンデー」の編集者さんからは、女の子はかわいく、化け物はちゃんと怖く描かれている。セリフだけではなく、主人公のポーズや表情など、細かいところに気を配った絵、読者のことをしっかり考えて描いた絵がいいとほめてもらいました。自分でも工夫していたポイントだったので、すごくうれしかったです。
自分の漫画はどの程度の実力なのかドキドキしながら参加したのですが、ここまで誠実に見てもらえるとは思いませんでした。想像以上に評価していただき、モチベーションが高まりました。この春からは大阪芸大のキャラクター造形学科に編入するので、知識や技術を研鑽して、将来的にはファンタジーに挑戦したいと思っています。

「少年サンデー」編集部 デスク
町田 尚太 さん

幅広く才能を見出すために、「出張編集部」はいろいろな大学や専門学校などでも実施しています。私は大阪芸大の「出張編集部」への参加は初めてだったのですが、前任者から
“大阪芸大さんは全体的にレベルが高い”と聞いていたので、今回はすごく楽しみにしていました。添削を終えてみて、やはり想像以上に上手な人が多い印象を受けました。バランスよく全体的によくまとまっている作品、画力、キャラクター設定など、突出した強みを持った作品など、個性もさまざま。いずれもポテンシャルは高いと思います。

瞬く間にデビューして100万部ヒットを出してしまうような作家さんが中にはいることも事実ですが、ほとんどの場合は何度も試行錯誤を繰り返し、成長していく新人作家さんがほとんどです。「週刊少年サンデー」編集部としての命題は新しい作家さんと出会い、伴走してくこと。私たち編集者の役割は、作家さんの支えとなるパートナーです。だから、漫画家をめざす皆さんにできるアドバイスはたったひとつ、“描き続ける”ことです。最初から完璧をめざすのではなく、描きたいことを見つけて、描き続ける。そして、賞に応募する、漫画雑誌の編集部に持ち込みするなど、人に見てもらう。その繰り返しが、もっとも大切なのだと思います。才能は千差万別。漫画家をめざす大阪芸大の皆さんも、才能の有無を問う前に、ぜひ“描き続ける”ことを止めないでください。

プロの漫画家として活躍する大阪芸大の卒業生にインタビュー

ちゃんやつ
2015年キャラクター造形学科卒
『もやもや』で「小学館新人コミック大賞」受賞。その後、アシスタントやバイト生活をしながら、作品を書き続ける。29歳にして漫画アクションに『ボクらの強化部』を連載。崩壊に瀕したサッカーチームを立て直す「強化部」を描いた異色のサッカー漫画として人気に。コミックは全4巻。
清家 孝春(せいけ たかはる)
2015年キャラクター造形学科卒
『雲がちぎれるとき』で24歳「小学館新人コミック大賞」を受賞。29歳で「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『無職の学校〜職業訓練校での200日間〜』を連載。同作は “働く”ことに向き合う、職業訓練校に通うさまざまな人間模様のドラマ。自身の実体験が詰まった、心温まるストーリーが話題に。コミックは全4巻。
ちーにょ
2016年キャラクター造形学科卒
23歳でWeb漫画「XOY(ジョイ)」でプロデビュー。胸キュンものの恋愛作品で女性ファンを獲得し、現在は電子書籍で『君とのツナガリ』全10巻、『リベンジ・ラブ』全14巻を販売中。Web漫画家として活躍する。

芸大:プロの漫画家をめざそうと思ったきっかけを教えてください。

ちゃん小学5年生の時に、僕は学校に行けなくなって、1年くらい当校拒否を続けていたことがあったんです。それで、暇つぶしに漫画を読んでいましたが、週刊少年サンデーの『うえきの法則』という漫画が面白くて夢中になりました。主人公の中学生がすごくカッコよくて、“こんな中学生になりたい”という憧れが、いつしか“こんな漫画が描きたい”という夢に変わりました。絵の勉強もまったくしてこなかったので、漫画をちゃんと勉強したくてキャラクター造形学科に進学しました。


清家:僕はもともとアニメ志望でした。漫画に転向したきっかけは、実は同級生だったちゃんやつの影響です。高校の時も美術部に入って、デッサンなどもしっかりやってきた僕からすると、ちゃんやつの絵は信じられないほど下手で…。こんなに絵が描けないのに、真剣に漫画家をめざすってスゴイなと、シンプルに感動したことがきっかけです。2年生でちゃんやつと一緒にマンガコースを選択しました。


ちー:私も小学生の頃から漫画が好きで、友だちと交換漫画をするなど、自作漫画を描いていました。勉強は嫌いだったので、大学は迷わず漫画が学べるキャラクター造形学科に。でも、入学してみるとまわりには上手い人が山ほどいて、自分のレベルの低さに愕然としました。なので、漫画家になる夢は諦めて普通に就活するつもりでしたが、課題で提出した作品がまさかの入賞。一念発起して真剣に漫画を描きはじめ、Web漫画の「XOY(ジョイ)」に持ち込みをしたら、あっさり掲載が決まって…。自分でも驚くほど、自然とプロの道を歩んでいました。

芸大:在学中、「出張編集部」には参加しましたか?

ちゃん:在学中から、僕はずっとスポーツ漫画を描いていて、「出張編集部」にも3〜4回参加しました。「ジャンプSQ」には2回行きましたが、どの回でもけっこう厳しい指摘を受けたことを覚えています。ただ、スポーツ漫画を描いている人が少ないという理由から、名刺をもらった記憶があります。


清家:僕は青年誌系の媒体で描きたかったので、「スピリッツ」など小学館の媒体に3〜4回参加しました。一番印象に残っているのは、“面白いことをちゃんと描きなさい”という指摘。自分では面白いと思って描いているので、すごくショックでしたが、今思うと読者に伝わっていないという意味だったんだと思います。最後に行った「出張編集部」で「少年サンデー」の編集者さんから名刺をいただきました。僕の作風から「スピリッツ」の方がいいとの判断で、担当編集者につないでもらうことに。それがきっかけで受賞をめざせたので、「出張編集部」は僕にとって大きなチャンスでしたね。


ちー:そもそも少女漫画がこないこともあって、私は1回しか行きませんでした。当時「出張編集部」で名刺をもらえた人の話は、私たちの間で話題になっていました。何と言ってもスタート地点に立てるかどうかの分岐点ですから。私はもちろん、名刺はもらえず、がんばって的な励ましの言葉をいただきました。

芸大:アマチュア時代の自分とプロになった自分、何が一番違うと思いますか?

清家:僕は担当編集の方からの指摘に対して、自分で納得してちゃんと直せるようになったことですね。


ちゃん:ネームに関してのダメ出しがあっても、変なプライドがあって、理解する努力をする前に、先に腹がたってしまう。納得できていないから、結果的に気持ちだけが焦って、あっちもこっちも気になって手を入れて、結局テンパることはよくありました。担当編集さんの指摘がしっかり吸収できるようになれば、うまく修正できるようになる。それだけ力がついたということだと思います。


ちー:自分的には面白いと思って描いているので、若い頃はカッと熱くなってしまいがち。自分のダメなところが理解できていない証拠なんですが…。


清家:空回りしている時代は、担当編集さんのことを信じられていないんですね。自分が正しいと頑なに思っている状態。フラットにコミュニケーションをとって、相手の言うことにしっかり向き合うことが大切です。あー、そういうことかと、正確に理解ができれば、ムダな作業も減り、集中して手直しができます。お互いに満足できる直しができたとき、初めてプロとしての手応えを感じました。

芸大:漫画家をめざす学生たちにメッセージをお願いします。

ちゃん:僕は、漫画で一番大切なのは伝えることだと思っています。伝わらなかったら、面白い、面白くないの判断すらしてもらえません。若い頃は特に、“分かる人にだけ、伝わればいい”という考え方をする人も多いのですが、それはプロとは言えません。まずは、分かりやすく伝えることをめざしてほしいですね。


ちー:漫画家への夢を一度諦めた私だから、いちばん大切なのは諦めない気持ちだと感じています。それと、あまりムリをしないこと。漫画家は作品づくりに集中しすぎて、心が折れてしまう人も珍しくありません。自分が楽しくないと、作品にもそれが反映されてしまうので、楽しみながら描いてほしいと思います。しんどくなったら、逃げてもいい。ムリをしないで、がんばってください。


清家:もともと漫画家をめざしていなかった僕が、こうしてプロとして活動していられるのは、ちゃんやつをはじめ、まわりの友だちのお陰です。僕一人だけなら、きっと続けられなかったと思います。一緒に勉強して、一緒に作品を描いて、お互いに切磋琢磨しながら、成長していける。そんな仲間は、何よりも大切で心強い存在です。学生時代は本当に楽しい思い出ばかり。皆さんも、同じ夢に向かってがんばれる友人を大事にしてください。