ポピュラー音楽コース 卒業演奏会 ポピュラー音楽コース 卒業演奏会
2023年3月17日、大阪市浪速区の「なんばHatch」で、演奏学科ポピュラー音楽コースの卒業演奏会が開催されました。
学生たちにとって4年間の学びを総括する大舞台。ステージには、卒業試験で優秀な成績を収めた学生がリーダーを努め、編成したバンドやユニット11組が出演し、入学以来、積み重ねた経験や磨いてきた実力を示す、熱い演奏が繰り広げられました。
会場は数々の有名アーティストも出演する大型ライブハウス
会場の「なんばHatch」は、2002年の開業以来、国内外を問わず、多くの有名アーティストが出演する、大阪を代表するライブハウスの一つです。音響・照明ともにコンサートホールにも匹敵するほどの設備を備え、日本のライブハウスで唯一、音響家が選ぶ「優良コンサートホール」に選ばれているなど、プロをめざす学生たちにとっては、まさに夢への足がかりとなる舞台。出演者たちは広いステージをめいっぱい使ったパフォーマンスを展開し、観客を魅了しました。
4年間の学びで音楽性を広げた、個性豊かな出演者たち
トップを飾ったのは、サックス専攻の中井遥斗さん。背後から宇宙人に抱えられているように見える巨大なきぐるみで登場し、バンドメンバーは映画『メン・イン・ブラック』のエージェントのような出で立ちというユーモラスなヴィジュアルが注目を集めます。大学でファンクやフュージョンに開眼した中井さんにとって真骨頂ともいえるナンバー『放課後は日曜日』を、複数のサックスを使い分けながら躍動的な演奏で聴かせました。「全力で吹いて疲れました」という中井さんですが、本公演では、この後も3つのバンドで出演し、伸びやかな音色を響かせました。
続いて登場した中島結衣さんは、「最初は音楽知識ゼロだった自分が、仲間とともにこんな立派なステージに立てるなんて」と喜びを噛み締めながら、ソウルフルな歌声で『Force』を披露。「普段は控えめになりがちで、今回もステージングに悩みました」という言葉とは裏腹に、激しいロックサウンドと共に情熱的なパフォーマンスを繰り広げました。
3番手は、小学6年生からからギターに打ち込んできたという牧野春樹さん。ポピュラー音楽コースでは、さまざまなジャンルに触れてキャパシティを広げましたが、今回は、自身のルーツであるヘヴィメタルナンバー『Deep Deep Deep Inside』をプレイ。ピッキングハーモニクスや速弾き、タッピングを織り交ぜながらドラマチック世界観を展開しました。
尹瑞辰さんは、編入学前に作ったというオリジナル曲『バタフライ』を熱唱。「みんながあまりやらないジャンルで勝負したいと思いました」と語る楽曲は、疾走感があり、高音の効いたさわやかなヴォーカルが印象的に響きます。同じ4年生の亀谷壮大さんのギターもサウンドを盛りたて、エネルギッシュなパフォーマンスが会場をヒートアップさせました。
フュージョンをルーツに持つ瀧川雅裕さんの楽曲は、THE SQUAREの『Travelers』。タイトなリズムの上で踊るようになめらかなトーンでギターを奏でます。曲が進むに連れ楽器陣の演奏も熱を帯び、白熱のクライマックスへ。ギターの上達をめざし、入学したというポピュラー音楽コースでの学びをあますことなく披露しました。
前半のトリを飾ったのは、学年代表を務めてきた天倉康介さん。今回のために書き上げたインストゥルメンタルの自作曲『amasoud』は、スライドギターが入るブルージーな展開と骨太なサウンドが特徴。自身のルーツである1970年代のロックと、そこから派生したソウルフルな世界観は、「4年間学んだことを生かして作りました」という言葉を体現するものとなりました。
後半の幕開けは、浦田滉心さんがパーカッシブなドラムでリードする『Tiempo de Festival』。今回の出演者の中では、もっとも大所帯となる12人編成のバンドで軽快なラテンサウンドを響かせました。多様に展開する曲調は、ホーンセクションの華やかさもあいまって南国のリゾートのようなムードを演出。演奏後は「超楽しかったです!」という言葉とともに満面の笑顔を見せていました。
平岡桃佳さんは、ギターとヴォーカルのシンプルな編成で、『Life is Beautiful』を披露。歌詞の世界が自身の思いとリンクするという楽曲で、「歌っている間、4年間の日々がありありとよみがえってきました」と語り、優しく包み込むような歌声を聴かせました。
全11組の出演者の中で唯一、個人で参加したのは小山俊平太さん。「バンドまとめるのが苦手なので…」と照れながら語っていましたが、ステージでは、躍動的な演奏とステージングで存在感を発揮。『Traveling Clothes』をはじめ、アコースティックギターによるインストゥルメンタル楽曲のメドレーで、清涼感あふれるサウンドを奏でました。
坪井駿斗さんは自作曲『ta-ta』でエントリー。2年生から始めた作曲の集大成ともいえる楽曲は、静けさの中に揺らぐベースの導入からアップテンポに展開し、サックスやコーラスも交えた彩り豊かなアンサンブルを形成します。随所に入る決めのフレーズが心地よく、後半では坪井さんのテクニカルなベースプレイが楽曲をリードしました。
卒業試験でもっとも優秀な成績を収め、大トリに抜擢されたのは玉崎優紀さん。小学生から始めたピアノは、当初、「思い入れもなく辛いだけだった」とのことでしたが、高校時代に所属した軽音楽部で好きな曲を演奏する楽しさに開眼。披露された『Dancando No Paraiso』は、その喜びを体現するかのような流麗なピアノソロで始まりを告げ、ベースとドラムが入って一気にテンポアップ。軽快なジャズサウンドはラストまで高い熱量を保ち、刺激的で畳み掛けるような演奏を繰り広げました。
4年間の感謝を込めた感動的なフィナーレ
全出演者の演奏が終了し、最後は『仰げば青空』で、4年生全員が交代しながら歌声を聴かせました。教員や後輩、保護者への感謝の言葉を述べられ、さまざまな思い出を駆け巡らせる学生たちは一様に感極まった表情を見せていました。いよいよフィナーレを迎えようとしたその時、学年代表である天倉さんと副代表の平岡さんにサプライズでの花束贈呈が行われ、ここで2人は再び号泣。温かな祝福に包まれながら4年間の総決算となるステージは、感動的に幕を下ろしました。
今回の卒業公演は、私の歌と天倉くんのギターの2人編成での出演ということもあり、緊張しますが、4年間の集大成として、ベストなパフォーマンスができるように頑張りたいと思います。歌詞の内容が今の気持ちをダイレクトに表したものなので思い入れもひとしおです。演奏曲目は、原曲がピアノと歌のアレンジだったのですが、伴奏をギターに変えることで少し苦労しました。しかし、4年間の学びで、こういったアレンジを自分たちで考える力を身につけることができたのは、自分でも大きな成長だと感じます。
中学生の頃に学園祭のバンドで歌ったことをきっかけに、将来はヴォーカリストとして歩んでいきたいと思うようになりました。活動拠点として大阪か東京に出ようと思い、いろいろな学校のオープンキャンパスを見学したのですが、大阪芸術大学でポピュラー音楽コースの先輩方が演奏している姿がとてもかっこよかったので、「音楽を勉強するなら、絶対ここだ!」と入学を決意。入学後は、いろいろな音楽性を持った仲間とコミュニケーションしながら演奏する喜びや楽しみを知ることができました。自分の歌についても、最初は空回りしていたのが、レッスンの中で、「短所の克服に躍起になるよりも、長所をしっかり伸ばすべき」と教えていただいて新たな道がひらけました。
卒業後は、音楽を仕事にして歩んでいけるようになるのが大きな目標です。そのためにも今回出演するユニットでの活動や、ヴォーカリストとしての鍛錬を欠かさず邁進したいと思います。
ポピュラー音楽コースに入学してから今日まで、いろいろなステージに出演させていただいたのですが、ついに最後の日が来てしまいました。寂しい気持ちがある一方、みんなと一緒に最高のライブにしたいという情熱も湧き上がっています。今回、自分がリーダーを務めるバンドでは、オリジナル曲を演奏するのですが、コード進行や尺は自分で決めてアレンジは、メンバー全員でセッションを重ねながら作りました。大変な作業でしたが、これぞバンドの醍醐味という感じで、とても充実した時間を過ごすことができました。大好きなハードロックをモチーフに、これまで学んできたさまざまな要素をフレーズの端々に込めています。
ギターは、もともと趣味でやっていたのですが、長く弾いているうちに技術や理論をしっかり突き詰めたくなり、ポピュラー音楽コースの存在を知って入学を志望しました。それまでは曲の構成要素なども意識せず単純に弾いていたのですが、座学を学んだことでコード進行の中にあるストーリー性を理解できるようになり、今では一つの曲の中で、どのような流れを作るべきかと考えることが楽しくなりました。自分の中になかったR&Bやファンク系のジャンルを知ることができ、16ビートでのカッティングなどを身につけることができたのも大きな学びでした。
卒業後は、同期の平岡さんや小山君とのユニットでのアーティスト活動はもちろん、ギターの講師などもできればと考えています。常にギターに触れながらの生活を、この先も送っていきたいですね。