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未来を創り、社会を変える力を学ぶ アートサイエンス学科の作品展「X展」 未来を創り、社会を変える力を学ぶ アートサイエンス学科の作品展「X展」

アートサイエンス学科 / イベント
2022/06/23

アートとサイエンステクノロジーをかけあわせ、新たな未来を創り出す力を養うアートサイエンス学科。その学びの成果を紹介する作品展「X展」が、2022年4月29日~5月5日、あべのハルカス24階の大阪芸術大学スカイキャンパスで開催され、多くの来場者でにぎわいました。

プロジェクションマッピングやロボットなど、常識を超える新しい表現や暮らしのアップデートを追求した多彩な作品を展示。日替わりのワークショップも行われ、アートサイエンスに興味を持って参加した高校生たちがユニークなプログラムに挑戦しました。

アートの力と最先端テクノロジーが融合した作品が集結

アートサイエンス学科が創設された2017年からスタートした「X展」。今年度は、第1期・第2期の卒業生による優秀作品や、各種コンテストで受賞した学生作品、トップクリエイターや最先端の研究者として国内外で活躍する教員陣の作品を含めて全32作品が展示され、注目を集めました。

迫力ある映像が映し出されるプロジェクションマッピング、人の動きに合わせて動くインタラクティブアート、癒しを与えるペットロボット、VR(バーチャル・リアリティ)とアバターを組み合わせた研究やアンドロイドロボットなど、作品も多種多様。来場者の年齢層も幅広く、大人から子どもまで多くの人がアートサイエンスの豊かな可能性にふれる展示を楽しみました。

デジタルとフィジカルの境界を表現した「Re-Materialization of Waves, No.3.4.8」(落合陽一客員教授)
声が魚のモチーフとして可視化されるデジタルインスタレーション「みんなのこえ水族館」(BUTTON INC.)
アナログな遊びにデジタルの要素を組み合わせた「消しロワ~無限パンチ編~」(学生作品)
東京国際プロジェクションマッピングアワード最優秀賞受賞作品「万物流転」(学生作品)
自転車を使った新発想のエンターテインメント作品「Spirit of the Garage」(短期大学部卒業生作品)

期間中には、アートサイエンス学科教員によるワークショップも開催。「ゲーム感覚で未来を考える」「科学と芸術」「プロジェクションマッピング制作」など、日替わりの様々なテーマで、既存の枠を飛び越え、新しいモノやコトを生み出す力を磨くプログラムを実施しました。

参加者は楽しみながらアートサイエンスの学びを体験。「人の行動を促すアートサイエンス作品企画」のワークショップに参加した高校生たちは、「グループでアイデアを出し合い、協力して形にしていくのが楽しかった」「実際にどんなことを学ぶか体感できた」「アートとサイエンスの区分や自分の価値観について考えることができた」などと目を輝かせ、アートサイエンス学科への関心や理解をさらに深める機会となったようです。

塚田有那先生による「スペキュラティブワークショップ」では、ゲーム感覚で未来を考えながら構想力を高めるトレーニングを実施
宮下敬宏先生・堀川優紀子先生による「人の行動を促すアートサイエンス作品企画ワークショップ」。様々な課題にアートサイエンスの発想や手法で取り組んだ

萩田紀博アートサイエンス学科長は、X展の意義について「アートサイエンス学科の目的は、単なる技術や知識の修得ではなく、発想力や論理的思考力、表現力を磨いて“構想力”を養うこと。X展は、その成果を広く紹介する場です」とコメント。

「学科誕生から年数を重ね、学びの内容も進化し続けています。これからも意外性のある作品や研究によって、社会的な課題を解決したり、日常をアップデートしたり、子どもたちの知育に役立てるなど、未来に向けて新しい価値を発信していきたいですね」と今後の抱負を語りました。

萩田学科長が、来場した高校生と直接コミュニケーションする場面も
アートサイエンス学科 教授
安藤 英由樹 先生(インタフェース研究者)

アートサイエンス学科は理系・文系・芸術系と様々な領域を横断する学科。学生の興味や扱う分野も音楽や絵画、デジタルなど幅広い一方で、具体的に何を学び、どんなことができるのか、外からは見えにくい面もあります。今回のX展では、ただ受け身で鑑賞するだけでなく、体験したり考えさせられたりする作品を多くセレクト。ジャンルやスタイルも多岐にわたり、アートサイエンスへの理解につながる作品展になったのではないかと思います。

学生にとっては、作品を見てくださる人と直接コミュニケーションして、反応を確かめ、会話を交わす貴重な機会。X展では、出展者以外にも希望する学生がガイドとなって、作品の詳細や技術などを来場者に説明します。相手にわかりやすく伝えるには、どの作品についてもしっかりと観察して理解し、自分なりに解釈しておかなければなりません。説明が難しい作品には何が足りないのか、逆に見ただけで伝わるのはどんな作品かと考えるプロセスも、自身の制作に役立つはずです。

今回は私自身が学生と一緒に取り組んだ作品も出展しました。唐の時代の中国の人形(加彩婦女俑)と透過液晶ディスプレイを組み合わせ、学生が制作した映像コンテンツを投影した作品は、大阪市立東洋陶磁美術館に展示したもの。海外との共同プロジェクトとして、5G通信で日本と台湾の会場を接続し、学生のレーザーアートと台湾でのダンスパフォーマンス映像を融合させた作品も。こうした体験を通して、授業では伝えきれない学びにふれ、言語化できない感覚を体感してもらえればうれしいですね。

アートサイエンスは時々刻々と変化していくものです。学生一人ひとりがアートサイエンスとは何かと熟考し、自分なりの定義を見つけてもらいたい。そのように「自分ごと」として物事を考え、「自分だけの何か」を見つける力を高めていくと、これからの生き方の質そのものも変わっていくのではないでしょうか。

アートサイエンス学科 4年生
土居 能恵留 さん

今回出展した「Type Aquarium」は、四角い箱の上の部分が本の形になっており、本を開くと活字の海を泳ぐ魚が浮かび上がって見えるというメディア作品です。泉大津市立図書館に展示するため5人チームで制作したもので、本というアナログな媒体をデジタル表現として活用。本を水槽に見立てた世界観の中で、文字と魚たち、鑑賞する人の間に生まれる関係性をテーマにしました。
本を開閉する感覚の再現や、耐久性を持たせる点に苦労しましたが、あれこれ試行錯誤するのも楽しく、納得のいく作品に仕上げることができました。魚や文字が立体的に見える3DCGコンテンツとの調整にも注力。実際に見てくださった人たちも、本当に飛び出てくるような映像にびっくりされることが多く、ねらい通りの反応を得られて手応えを感じました。
自分自身、アートサイエンス学科で学ぶことで、新しい技術に対する知見が深まり、時代の流れを読み取る力がついてきたと実感しています。何よりも、常に新たなテクノロジーや発想をいかした作品に挑戦できるのが魅力。ハードウェアを扱うのが得意なので、その強みをいかして、外部のデザインを見るだけでも面白く、体験するとさらに楽しいという2段構えの作品をつくることが目標です。

アートサイエンス学科 3年生
浅田 梨音 さん

「消しロワ~無限パンチ編~」は、アートサイエンス実習の一環で制作し、子どもたちに新しいスポーツの楽しみ方を提案する作品展「NEW SPORTS ART」に出展した作品です。子どもの頃よくやった遊びに、デジタルのエッセンスをプラス。従来の「消しバト」は、指で消しゴムを弾いて相手を枠外に追いやりますが、この「消しロワ(消しゴムバトルロイヤル)」では、パンチンググローブで箱を叩き、より大きな動作で新しいスポーツ感覚を楽しめます。
チーム4人で役割分担し、私は3Dモデリングや箱の装飾、ゲームの紹介動画を担当。制作中は手探りの部分も多く何度もくじけそうになったものの、実際に展示すると、子どもたちがとても喜んでくれて、本当にうれしかったです。今回のX展では、その経験をもとにバージョンアップ。多くの人が体験してくださり、大人の方にも「おもしろい」と楽しんでもらえたのが、自信につながりました。
アートサイエンス学科は自由度が高く、色々な分野に広く触れられる学科。表現の幅を広げてもいいし、自分に合うものを深掘りしてもいい。今回の制作を通じて、企画や構想を練る楽しさを実感することができたので、そうした力に磨きをかけ、将来にもいかしていければと思います。

短期大学部 デザイン美術学科 アートサイエンスコース 卒業生
村上 豪弥 さん 

短期大学部卒業制作展で銀賞を受賞した「Spirit of the Garage」を出展しました。これは、ガレージにあるモノたちが音楽に合わせて動き出すというファンタジーな発想を、圧倒的な手数とスケールで実現したエンターテインメント作品。自転車をこぐことでモノに命が宿る仕組みから、センサーやモニター、照明、プログラミングまで、様々な技術を駆使しています。世界観やリアリティにこだわって、壁や床、ブースも一から設計。時間との戦いもあって大変でしたが、同級生らの励ましやサポートに力づけられて完成させることができました。
X展では、4年制大学の先輩方や先生方の作品と並んで展示され、とても誇らしかったです。実際に自転車をこいだり、立ち止まって見てくれたり、お子さんが手でペダルを回してくれたりと、大勢の人が楽しんでくださる姿に感動。作品展への参加を通して同じアートサイエンスを志す仲間とつながることができ、これからもこの関わりを大切にしながら、もっと成長していきたいと思いました。
パソコンに触ったこともなかった僕が夢中になり、誰も作ったことのないオリジナル作品を生み出せるようになったのは、アートサイエンスを学んだおかげ。今後はTikTokなど動画クリエイターとしての活動を中心に、いろいろな作品を発信し、デジタルアートの面白さや楽しさを広めていきたいです。

子どもたちに元気を贈るプロジェクションマッピングアニメーション「MAKE」(学生作品)
聴覚・触覚・視覚でコロナ禍の音を後世に伝え残す「社会情勢の変化における街の音」(卒業生作品)
人の動きと液体の模様が連動するインタラクティブアート「Zufall」(短期大学部卒業生作品)
大阪市中央公会堂の特製模型に投影されたプロジェクションマッピング