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白浜アートプロジェクト2022 白浜アートプロジェクト2022

芸術計画学科 / イベント, プロジェクト, 産官学連携
2022/11/28

リゾートがアートを感じる空間に変貌する
芸術計画学科によるワークショップ
Summer Memories 2022 in 白浜

芸術計画学科は、子どもたちがアートに親しめるよう工夫を凝らしたワークショップイベントを2022年8月12日・13日の2日間に渡って実施しました。会場はSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE(以下シーモア)と南紀白浜マリオットホテル(以下マリオット)という2つのホテルです。それぞれの会場ではライブペインティングのパフォーマンスとダンボールアートの展覧会も開催されました。

2つのリゾートホテルでワークショップが同時進行

昨年まではシーモアとマリオット、どちらのホテルでも同じワークショップを展開してきましたが、今年はハード面やターゲット層の違いを考慮して、それぞれ別のワークショップを実施することを決定。企画案を4月から練っていきました。


夏休みの宿泊客に家族利用が多いのはどちらのホテルも同じだということは昨年までの経験からわかっていました。より詳細に分析すると、シーモアはファミリーに加え、若年層の友人同士といったゲストも視野に入れることが必要になってきます。マリオットでは、祖父母と一緒に旅行するファミリーも多く、小さなお子さんが多いのが特徴。この違いを考慮してワークショップの内容を分けることにしました。共通するのは、スタッフ(学生)がゲスト(参加者)とスムースにコミュニケーションがとれるようにするためのミニゲームをまず行うこと。さて、それぞれの事例を見ていきましょう。

水中貝がら落としやお手玉落としといったミニゲームからワークショップをスタート
感染対策も万全に、ミニゲームで子どもたちとの距離を縮めていきました

ポケット・シー 〜ぎゅぎゅっと!彩る夏を遊びつくそう!〜

マリオットのワークショップで子どもたちが作ったのはグラスサンドアート。カラフルな砂を層状に積み重ねて作品を作っていきます。さらにカラーサンドの上に白浜ならではのパンダやイルカなどのキャラクターパーツ、貝殻やビーズをレイアウトしていくとオリジナリティがアップ!グラスサンドアートはその名の通り、ガラス瓶を使って作っていくものです。しかし、ワークショップは小さな子どもたちの参加が前提。割れたりして怪我の原因となることを考慮してプラスチック製の瓶を採用しました。


企画段階でもマリオットの家族比率は高いと予想していました。アンケート結果を見てみると家族での旅行は95.5%、シーモアでは84.1%と10ポイント以上の差がありました。やはり、昨年の経験をベースにした学生たちの見立ては正しかったようです。アンケートの自由回答欄には「とても可愛い作品が出来て子どもが大喜びでした。ありがとうございました!」といったうれしいコメントも多数ありました。

ワークショップは盛況でテーブルがすべて埋まった回もありました
カラーサンドの層を崩さないように、そっとデコパーツをレイアウト

マリンフォトフレーム 〜あつめよう!思い出のカケラ〜

美しい海が眺められる「インフィニティ足湯」や海風を感じながらゆったりとした時を過ごせる「mikanterrace」など、思い出を写真に美しく残すにはうってつけのリゾートホテルがシーモア。それゆえ、ワークショップで作るのは貝殻やガラス細工でデコレーションするフォトフレームです。どんな写真をフレームにおさめたいかを考えながら思い思いに飾り付けていきます。


ワークショップ後に実施したアンケートでは「子どもたちがすごく楽しんでいました♡ありがとうございました!」といった子どもたちが喜びを表現した感想が多数寄せられました。また、「子どもに紛れていい思い出作らせていただきました。ありがとうございます!」というコメントも。お母さん世代もしっかり楽しめるワークショップだったようです。

サンプルを参考に接着剤でパーツをくっつけていきます
フォトフレームが完成したら、インスタントカメラのチェキで作品とともに記念撮影

子どもはもちろん、大人も魅了する動くダンボールアート

ワークショップと並行して、大阪芸大の卒業生による展覧会とライブペインティングが行われました。マリオットで開催されたのはダンボールアートの展覧会。作家の千光士義和先生は大阪芸大の芸術計画学科の制作トライアル演習で教鞭をとっています。学生たちに作家ならではの視点を持たせることを意図して、作品を制作し、自分でプレゼンテーションさせるカリキュラムを受け持っています。「作家というのは作品のプレゼンする視点が乏しいもの。プロデューサーやディレクターを目指す学生たちは発想が豊かで、なおかつプレゼンにも長けているんです」と語っていました。講義はいつも刺激があって、楽しいひと時だそうです。


大阪芸大の映像計画学科(現映像学科)を卒業し、子ども番組の制作畑で人形アニメーションの制作に携わっていたことから、動くダンボールアートの世界にのめり込んでいった千光士先生。作品には、必ず銀色に光るレトロなロボットが出てきます。「どんな世界観にもあうのがロボットという抽象的な存在。恐竜がいる時代にも、不思議な機械が動いている世界にもフィットしてくれる訳です」と自らの作品を解説。作品を見ているとひとつひとつにストーリーが存在するのがわかります。そのなかでロボットが、ひとつの狂言回しとして機能しているようです。「子どもたちが喜びそうな作品を、と思って10点選んで来たのですが、お父さん世代の方がじっと見入っていたのは意外でした」と語るように、様々な発見のあるワークショップだったようです。

動くダンボールアート作品「ザウルスライド」と千光士義和先生
巨大な恐竜が海を渡っていく様子を描いた「サウルスシップのアニマルツアー」

ライブペイントとプロジェクションマッピングを
融合したパフォーマンスを展開する透明回線

大阪芸大卒業生のライブペインティングのパフォーマンスチーム「透明回線」。メンバーはペイント&デザインを担当する うきちさん、ペイント&イラストのSHUNさん、映像と音響を手掛ける としおさんの3名です。パフォーマンスの現場となるのはシーモアのなかでも、ボルダリングやエアホッケーが楽しめるプレイルームのすぐ近く。プレイルームで遊び疲れた子どもたちがライブペインティングを興味深そうにじっと見ていたのが印象的でした。


「10年近く、このイベントに関わってきているので、今では白浜温泉旅館協同組合の皆さんやホテルの方々とコミュニケーションをとってアイデアを練っています」と語るのは うきちさん。猛暑が続く今年の夏、「少しでも暑さを忘れてほしくて、イラストの表情は爽やかに、色もシャーベットトーンにしています。そういったアイデアも皆さんとの話し合いのなかから生まれてきました」とのこと。ライブペイントやプロジェクションマッピングの制作プロセスが公式インスタグラムでも公開されています。

うきちさんとSHUNさんが描く絵に合せ、同時進行で としおさんがプロジェクションマッピングの画像をシンクロさせて完成させていく
芸術計画学科特任教授
井上 茂樹 先生

前回までのワークショップでは、マリオットとシーモアで同じワークショップを行っていました。同じ白浜のリゾートホテルとはいえ、それぞれターゲット層が微妙に違います。夏休みはご家族で利用されるお客さんが多いのは、両ホテルとも同じ。しかし、昨年の経験からマリオットは小さなお子さんを連れたご家族が多く、シーモアは若いファミリーに加え、友達同士での宿泊客も多いという相違点が想定されました。

その特性に合せて、学生たちとそれぞれのホテルに合せたコンテンツを練っていきました。アイデアをカタチにするうえで、力になったのは昨年の白浜アートプロジェクトに参加していた3年生たちの経験です。「お母さん、お父さんの心に刺さる企画を考えよう」と企画段階で学生たちによく話していました。ワークショップに参加する小さな子どもたちの親は三十代がほとんど。学生たちにとっても年代が近いので、アイデアも考えやすいはずです。2年生からも積極的にフレッシュなアイデアがたくさん出てきたので、骨子は早めに固まっていきました。実際にワークショップを実施してみると、マリオットでは祖父母を含めた三世代で来ておられるお客様も多いようです。そういったお客様に今後どうアプローチしていくかが来年の課題になると思いますね。

芸術計画学科教授
稲村 正 先生

私はイベントの実践的なマネジメントやプロデュースを教える講座を持っています。そこで学生たちに繰り返し伝えているのが、アイデアを具現化するための年間スケジュールや予算書、組織表の大切さ。こういったリアルな内容がしっかりしていないと、どんなに面白いアイデアも絵空事に終わってしまいます。運営面でもマニュアルがスタッフ全員にしっかり共有されていないと、スムースに進行することができません。今回はポイントを的確に掴んだマニュアル作成が早めにできていて、それがアンケートでの高い満足度に繋がりました。

マリオットとシーモアそれぞれ違うコンテンツでワークショップを実施。それは 2 つの
チームが互いに競いあえる環境です。今回、シーモアでは満足度100%という結果に。マ
リオットでは残念ながら100%に少し届きませんでした。当然、来場者地域、来場者層等 諸条件が違う影響があります。しかし、それぞれ異なる環境のなか、違うワークショップを展開し、その成果を次に生かしていく下地ができたと考えています。競いあえる環境を活かして、学生たちを指導していきたいと考えています。今回、参加学生たちはイベントを主催し運営したことで企画段階と実際の違い又、直接来場者と触れ合えたこと、イベントの重要な要素である来た人に笑顔を貰っていただける事が主催者として貴重な経験できたと思います。

芸術計画学科3年
陸田 珠希 さん

昨年、このワークショップに参加したとき、2日連続で参加してくれたご家族がいらっしゃいました。「一度、参加して子どもたちが喜んで、明日も参加したいって子どもに言われたの」とお母さんが言ってくれた嬉しさが忘れられず、本来は、大阪市役所地下2階 CAFE 英國屋でのコラボギャラリーのプロジェクトメンバーなのですが、先生に相談し、白浜アートプロジェクトも兼任することで今年も参加することができました。昨年の経験を活かして、このプロジェクトのリーダーも任せていただき、チーム全体の連携や進捗管理など行いました。

イベント期間中、私が現場代表を務めたマリオットのワークショップには、小さい子どもたちの参加が多かったと思います。ワークショップを運営するスタッフたちも生き生きとコミュニケーションをとって、子どもたちの気持ちを盛り上げてくれて、親子で笑顔になる瞬間がたくさん見られました。私は白浜が大好きで一年で5〜6回は旅行に来ています。友だちと来ることもあれば、1人で訪れることもあるほど大好き。将来は、演習授業やイベント現場で学んだ経験を活かして、アドベンチャーワールドでイベントの仕事に携わりたいと思っています。そして、たくさんの人たちに笑顔と感動を届ける場所を作っていきたいです。

芸術計画学科3年
井上 華那 さん

私は和歌山出身なので、県の活性化につながる企画に協力したいと思って、白浜アートプロジェクトに参加しようと決めていました。私が現場代表を務めたシーモアは、海が眺められるインフィニティ足湯やかわいいカキ氷屋さんもあって写真を撮ることを楽しむゲストが多いことが昨年の経験からわかっていました。学科長からも「写真を活かせるアイデアを出そう」とアドバイスを頂いていたので、ワークショップはフォトフレーム作りに。さらにチェキでの記念撮影をプログラムに入れるなど、写真を活かしたワークショップになったと思います。

「とてもさわやかな学生さんたちに対応して頂き、子どもたちと楽しい想い出になりました。 ありがとうございました。」といった評価も頂いたのもうれしいですね。担当スタッフの応対に好感を持って頂き、チェキでの記念撮影を学生と一緒に撮りたいとおっしゃったゲストの方もいらっしゃいました。しっかりマニュアルを作って、練習した甲斐がありましたね。このプロジェクト演習では、イベントの企画から運営までを実践的に学ぶことができました。ここで得た経験を糧に将来は音楽イベントに関わる仕事に就きたいと思っています。